こんにちは。MRとして日々医師や薬剤師の方々と話しながら、現場で感じる処方トレンドをデータで検証したくてNDBオープンデータを分析しています。
今回は前回に引き続き、厚生労働省が公開しているNDB(ナショナルデータベース)オープンデータを使い、2021年度〜2023年度の3年間にわたる処方動向を時系列で分析しました。内服薬・外用薬それぞれについて、処方数量の推移・薬効カテゴリ別トレンド・ジェネリック比率・都道府県別の地域差まで幅広く見ていきます。
分析に使ったデータ
- データ:NDBオープンデータ(厚生労働省)
- 対象期間:2021年度(2021/04〜2022/03)、2022年度、2023年度
- 対象:内服薬(外来・院外)/外用薬(外来・院内)
- 集計項目:薬品名・薬効分類・後発品区分・都道府県別処方数量
① 処方数量トップ10薬の3年間推移
まず内服薬全体で処方数量が多い薬品を確認し、3年間の推移を見てみました。
[グラフ:01_top10薬_推移.png]
最も目を引いたのがエンシュア・Hの急増(+81.8%)です。2021年度から2023年度にかけて約1.8倍に伸びており、2023年度には処方数量トップに躍り出ています。一方で同じ経腸栄養剤であるエンシュア・リキッドは-50.0%と激減しており、同一ブランド内での製剤切り替えが進んでいることがわかります。
MRとして現場を見ていると、半固形タイプへの切り替えは胃ろう患者の管理負担軽減や逆流リスク低減という観点から、医師・栄養士からの支持が高まっていると感じています。データがその流れを裏付けている形です。
またミヤBM錠(+38.5%)・レバミピド錠(+22.1%)など腸管保護系の薬も増加しており、抗生剤使用後の腸内環境ケアや、長期内服患者の胃粘膜保護への意識が高まっている可能性があります。
② 薬効カテゴリ別トレンド
[グラフ:02_薬効カテゴリ_トレンド.png]
薬効カテゴリで見ると、増加率トップは抗ウイルス剤(+114.7%)でした。2021〜2023年はコロナ関連治療薬の普及時期と重なっており、抗ウイルス薬の処方が急拡大したことが反映されています。続いて鎮咳剤(+94.4%)も大幅増。感染症後の遷延性咳嗽への対応が増えたことが背景にありそうです。
また精神神経用剤(+69.0%)・血圧降下剤(+53.4%)・アレルギー用薬(+51.1%)と、いわゆる生活習慣病・慢性疾患領域の処方が軒並み伸びています。高齢化の進行とコロナ禍での受診行動の変化(巣ごもりによる運動不足・ストレス増加)が影響しているのではないかと考えています。
一方で減少が大きかったのはX線造影剤(-70.9%)・末梢神経系用薬(-45.6%)。これらは入院・処置に付随する薬剤が多く、コロナ禍での入院抑制や検査件数の減少が影響していると推測されます。
③ ジェネリック(後発品)比率の推移
[グラフ:03_ジェネリック比率_推移.png]
| 種別 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 変化 |
|---|---|---|---|---|
| 内服薬 | 36.7% | 38.5% | 39.3% | +2.7pt |
| 外用薬 | 33.8% | 36.0% | 35.9% | +2.1pt |
内服薬のジェネリック比率は3年連続で上昇し、2023年度には39.3%に達しました。政府目標である「後発品使用割合80%以上」(数量ベース)と比較すると、このNDBデータは処方数量ベースのため単純比較はできませんが、着実に後発品シフトが進んでいることは確かです。
外用薬は2022年度に36.0%まで上昇したものの、2023年度はほぼ横ばいでした。外用薬は剤形・使用感のこだわりが強く、先発品を希望する患者・医師が一定数いることも影響しているかもしれません。現場でも「塗り心地が違う」という声を聞くことがあります。
④ 都道府県別の地域差
[グラフ:07_都道府県別_ヒートマップ.png]
都道府県別に処方数量を見ると、東京都・神奈川県・大阪府・愛知県といった大都市圏が処方数量の上位を占めています。これは人口規模の大きさをそのまま反映している部分が大きいです。
一方、GE比率の都道府県ランキングでは処方数量の順位と必ずしも一致しない点が興味深いです。地域によって医師や薬局のジェネリック推進姿勢・患者の意識・地域の薬局チェーンの方針などが異なることが影響していると考えられます。
[グラフ:06_都道府県別_GE比率.png]
変化率の地域差(05のグラフ)を見ると、処方数量の増加率は都市部・地方問わずばらつきがあり、特定の地域で急増しているケースも見られます。こうした地域差の背景には、地域の医療資源や疾患構造の違いが隠れている可能性があり、MRとして担当エリアの分析に活用できそうです。
MR視点でのまとめと考察
今回の分析を通じて、改めてデータが現場の肌感覚と一致していると感じました。経腸栄養剤の製剤切り替え、感染症対応薬の急増、慢性疾患領域の底堅い伸び——どれも日々の医師・薬剤師との会話の中で感じていたことです。
MRとしてNDBデータを活用することで、「なんとなく処方が増えている気がする」を定量的に示すことができます。担当先の先生に「実は全国的にこういうトレンドがあります」と話すための裏付けとして、今後も活用していきたいと思います。
今後やりたいこと
- 人口補正した都道府県別分析(人口10万人あたりの処方数)
- 特定の疾患領域に絞った深掘り分析
- 薬価データを掛け合わせた医療費インパクトの試算
引き続きNDBデータを使った分析を続けていきます。ご意見・ご感想があればコメントやSNSで教えてください。

